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 「人生は素晴らしい。」



 今年はレビューもやっていきたいなあと思いまして、初の題材は映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』です。今年はってもう3月だけどね、まあ、うん、観たのは結構前なので。拙い視点ですが、熱心な映画ファンと言うほどではないのであしからず。

 内容としては、奇妙にも老人の姿で産まれ、年を経るごとに若返っていく主人公ベンジャミンの一生を描いた人間ドラマ。語り部は幼馴染みのデイジーで、病床につく年老いた彼女がベンジャミンの日記を紐解くことで話は進んでいきます。
 主演のブラッド・ピットが80代から20台までを演じ切るってことで話題にもなりましたね。なるほど、確かにそれは見所のひとつかもしれない。特に違和感もなく、映像技術すごいわーなんて無粋なことを思わずに素直に見られるしね。若返る体験なんてそうそうできないから、演じる本人も楽しかったんじゃなかろうか。逆に、ヒロインのケイト・ウィンスレットは結構つらい役だったのかなあなんて思ったりもした。だって、徐々に若返る男の傍にいるわけですよ? デイジーというヒロインはバレリーナで、自分の美しさを自覚している人で、だからこそ若返っていくベンジャミンと年老いていく自分を比べずにはいられない。女性としてはなかなか厳しい状況なんじゃないかな、つい僻んでしまいそうだ。もちろん、一緒に歳を取ることができないことは、ベンジャミンの負い目にもなるけれど。そういう葛藤も丁寧に描かれている話だったわけですよ。
 歳を遡るって設定だけでセンセーショナルではありますが、実際に観た感想としては「ごく普通の人生」のようでした。初恋にときめいたり、仕事帰りにお酒を楽しんだり、知る人の死を嘆いたり、年を重ねて死に近付くことを恐れたり……たぶん、出来事を取り上げて見るだけなら、本当に平凡なんです。それでいて3時間も観ていたなんて信じられないくらい退屈しなかった。描写の力というか、圧倒的な空気感、ベンジャミンとデイジーの距離感が単なる記号にならないで、そこに存在する感覚。監督のデビッド・フィンチャーの手腕なのかな、それとも演者たちの力か、両方だと思うけど。

 奇抜な設定の割に、すごく当然な(でも忘れてしまいがちな)人生で大切なこと、大事なものを丁寧に丁寧に描いたような印象を受けました。普段はエンターテインメントな映画ばかり観てるけど、たまには人間ドラマもいいなあ。
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