まずあれですか、脱出ゲームとはなんぞや、というところからかしらん。ネットで無料ゲームをやったりする方は馴染みがあるかもですね。画面の怪しい箇所をクリックしてアイテムを手に入れたり、暗号なんかの謎を解いたりして閉じ込められた密室から脱出する、という一種のアドベンチャーゲームです。それを、実際にやってしまおうというのがリアル脱出ゲーム。
さて、今回の舞台は閉館時間をすぎた遊園地。明かりも落ち、遊具は静かにたたずむばかりで、日の高い時間のにぎやかさは皆無……ごめん、言い過ぎた。1000人参加だから結構わいわいしてました。雰囲気はあったけどね。今回は屋外ってこともあって大雨の中の開催もあったらしいですが、私らの回は幸い晴れてました。ちなみに3人で参加してます。3人とも3回目の参加にして脱出経験なしなので気合は充分。
大判の封筒をもらって入場、ゲームスタートまでステージ席で待機。封筒には合図があるまで開けてはいけないと書いてあるものの、その他にヒントも書いてあり、すでに脱出は始まっているのだとばかりに知恵を出し合う3人。「太陽と月の真ん中には大切なものが隠されている」……曜日に当てはめてみたり文字数を数えてみたり、いろいろ試してみましたけど、まあ関係なかったので割愛。間違いなく重要なヒントではありましたが。
開始時間になり、壇上のゲームマスターからルール説明。もうこの辺でわくわくしすぎて息切れしてました。だってもう楽しみすぎるんだ、早く封筒を開けたくて仕方ないんだ。制限時間は90分です、60分を過ぎた時点でアイテムを何も手に入れていない人は広場でヒントをあげます、時間がないからって走っちゃだめですよ! そんなもろもろの注意を聞き、封筒の口に手をかけ、いざゲームスタート!
封筒の中身は、よみうりランドのガイドマップ、メモ用のA4の白紙と鉛筆、それから問題用紙。問題用紙には8番までの謎の文章と縦5×横6のマスが書いてあり、下の方にはイベントのロゴと不思議な幾何学の模様も。短い線と点で書かれた幾何学模様はいかにも暗号っぽいけれど、今のところ何のヒントもないので一旦置くとして、まず文章の方からつぶすことに。
文章は、例えば「1.白い谷。奥の奥。」といった調子で、これだけ見ても何のことやら。ここで前もって遊園地を調査済みのチームメイトが「そんな名前のアトラクションがあった」と。なるほど、ガイドマップを見ると「ホワイトキャニオン」っていうコースターがある。どうやら1から8までの文章はそれぞれ園内のどこかを指したもののようで、とりあえず近場から埋めようと早速行動開始。
いざコースターの近くへ行くとすでに人だかりができていて、その中でも一際人のいる箇所を見ると、何かが書いてあるボードが! 人並みをかき分けて行くと、ボードに書かれていたのは、中に数字や仮名が書いてある縦2×横3マスの図形。マス目は一部太線になっていて、どうやら問題用紙のマス目をこれで埋めろってことらしい。となると、早々にメモを取って、次の問題文の示す場所へ……と繰り返す。結構なマラソンですよ! 遊園地広いよ! 問題文自体はさほどの難しさでなかったのが救いといえば救い。おかげさまで動き通しでしたが、足を止める暇もないので。問題文の中で一番すごいなーと思ったのは「ぐるぐるまわる。ただひとつの光。」というもの。これもチームメイトが気付いたんですが、唯一動いていた観覧車の中で、一機だけ明かりがついていまして、それが下に来たときしかボードが見えない! 一回で見れました、幸運でした。あと暗闇の中でひとつだけ光って回っている観覧車はきれいでした。
時に手分けもしつつ、順調に集まっていく手がかり。8つ中2つはイベントスタッフが立っているだけでボードはなく、手元には6つのメモがそろってる。そこで60分に差し掛かったので、1人を探索に送り出して広場へ。ヒントの時間になるまでそろったメモだけで解読を試みてみる。メモした図形はL字だったり長方形だったりまちまちだから、太線の位置を合わせて、5×6に収まるように……とやっていると、マス目が埋まり……
「あかのつなぎ
にべろをだせ
くろのつなぎ
にぴーすしろ」
さっき見たスタッフがそんな格好してた! 別行動していたチームメイトに早速電話。携帯電話って素晴らしいよね。赤服のスタッフのいたフリーフォールの近くにいるというのでそっちをまかせ、こっちは黒服のいたお土産売り場へ。2人でピースして通してもらうとピエロが立っていて、片仮名が四角く並んで書いてあるカードを配ってました。3字×3字でひとつの四角になっていて、□□◇◇、といったふうに計36字。それから◇の下には「23-29」「8-21」とそれぞれ書いてある。これだけじゃあ……と思っていたところに、赤服の方に行っていたチームメイトから写メールが。届いた写真は明らかにこの片仮名の四角と組み合わせて使うヒント。携帯電話って素晴らしいよね! とりあえずこっちにきてスタッフにピースして、と伝えて、先に解くことに。
届いた写真は白いボードを写したもので、そこ「井」の字のように線が。○×ゲームを想像してもらうとわかりやすいかもしれません。3マス×3マスに、○とか×とか書いてそろえるあの遊び。あのマス目が送られてきて、今手元には3字×3字のカードがある! つまり、○とか×とか書くところに、それぞれ文字がはまるって寸法ですよ。そしてはじめに手に入れた問題用紙、下の方に書いてあった幾何学模様! □とか<とか、そのマスに当てはまる文字を抜き出して順に並べると……
「ソラモンデウインクシロ」
きた! よみうりランドの入園口は「スカイゲート」だ!
いや待て! まだ解いてない謎がある! ◇の下にあった数字、「井」の下にも書いてあった「10-21」「F-22」、それから問題用紙のマス目を埋めたときの5×6マスの一番下の段に入る「14-、-22、M、23-、-26」も使ってない。これを解かないままなんて、そんなわけがないんじゃないか。数字とアルファベット……数字をつなぐ線……線と点?
手元のガイドマップを広げると、園内のアトラクションには1から順に番号が振られている。それ以外のレストランなどの施設はアルファベットで。
これだ! 手元を懐中電灯で照らしてもらい、はっきり描けるボールペンを貸してもらい、地べたにしゃがみこんでベンチを机にガイドブックに直接書き込んでいく。23と29、8と21、10と21……ハイフンでつながれた数字を始点に線を引き、アルファベットを塗り潰して点にする。すると、みるみるうちにガイドマップの上に見覚えのある幾何学模様が! これ! この瞬間のために脱出ゲームやってる!
片仮名と線の表で読むと「ニカイ」となるのを確認して、おっぴろげていた紙類をざっくり回収して早足でスカイゲートへ。数人立っているスタッフに並び、ここぞとばかりに2回ウインク! ひっかかんねーぜ!
正直言うと、この瞬間、脱出できた気でいました。だって入園口だしさ。外見えるしさ。だけど、まだ使ってないヒントがあるじゃんね、今にして思えばだけど。
スタッフの横を無事に通過できたものの、途中で一枚のカードをもらい、園内に戻される。まさにUターンですよ。絵に描いたような回れ右ですよ。再びチームメイトと合流して、もらったカードを3人で検証。名刺サイズのカードにはたった2行。「A○HLM●SX」と「馬から下を読め」。都合上書き換えてますが、○は太陽の絵文字、●は三日月の絵文字です。そう、封筒のヒントをまだ使っていない! とはいえ、太陽と月の真ん中って……L? ガイドマップでLの施設はあるけど、そこはさっき園内を駆けずり回ってる最中に見て何もないことを確認済みだし……ていうか馬から下って何よ、馬ってどれよ。
ここにきて一気にスピードダウン。さっき一瞬出れた気になっちゃったのと、あとすごく疲れたので頭働かない! 少なくともこれ以上追加のヒントはないだろうから、手持ちのヒント類を全部見比べて3人でうんうん唸る。馬ってメリーゴーランドとか? でもここのってキャラクターの犬使ってるから馬じゃないんだよね、じゃあUMAに直してマップと、ってUなんてマップにないし、ああ封筒と問題用紙に馬いるよ、ロゴに馬の絵使ってる、けどそれの下ってどういう意味?
残り時間10分です、5分です……とカウントダウンのアナウンスが園内に響く中、一向に考えがまとまらない3人。ひらめきやしない。わああああぁぁぁぁぁ時間ないよーわかんないよー……。
そんなフェードアウトでタイムアップとなったのでした。ぐったり。全員集合のアナウンスが流れて、脱力感と散らかした紙類をしょって移動。スタート地点であるステージに戻る。周囲には同じように疲れた方々。ですよねー。
そのままゲームマスターによる答え合わせ&解説。スカイゲートをくぐるまでの説明の間にもざわめく会場。ちょっとした優越感。そして最後に手に入れたカードの解説。「馬から下を読め、というこの馬は問題用紙の中にいます」とロゴを指すゲームマスター。そこに馬がいるのには気付いてた! 惜しかったってことか! 「この馬から下、つまり馬が正しい向きを向くように用紙を回して、そこから下に読むのです」と解説用の大きなボードをくるっと回すゲームマスター。なるほど、そうすると幾何学模様が全く違う文字になる! これすごい、この暗号すごいぞ! 読み解ける文章は「ナカニハイツテアクシユ」、中に入って握手、となる。中?
「A○HLM●SX、というのはアルファベットの中で“エ”で始まるものを並べたものです」
え?
「太陽と月のマークにも、同様にアルファベットが当てはまるわけです。つまり、エー、エフ、エイチ、エル、エム、エヌ、エス、エックス、となります。そして太陽と月の真ん中には大切なものが隠されています。遊園地のマップのFとNの間にある場所、そこにある門のそばには真っ白いテントが立っています」
えー! そんなの解けっこないよ全然気付かなかったよ! つまりそのテントに入って中にいる人と握手すれば脱出成功!と相成ったわけです。残念ながら私ら3人には、エで始まる、の時点でノックアウトでした。さっぱり気付きませんでした。残念すぎる。結構いい線はいってたのになあ、最後の最後でつまずいたなあ……。
「それではこちらが今回脱出できた方々です!」
ゲームマスターがそう言うと、ステージの奥が開き、ぞろぞろと出てくる人たち。ステージ中央まで出てきて、つないだ手をわーっと上げる。わーなにこれうらやましい! ちょっと今回の脱出成功者めちゃくちゃ気持ち良さそうなんですけど! ぞろぞろといえど、1000人中65人だかの栄誉ですってようらやましい! うーらーやーまーしーいー!
そんなこんなで今回も脱出できなかったのでした。あー悔しい。次?「あるスタジアムからの脱出」だってさ、明治神宮野球場だってさ。行くつもりではいるけど、予定がどうなるかね。クリスマス真っ只中だしなあ。
終わってみると、今回の謎解きは難易度はそんなでもなかったのかな?と思わないでもない。特にスカイゲートに行くまでは、時間さえあれば結構たくさんの人が辿り着けるんじゃないだろうか。比較的ベタじゃないですか、なぞなぞっぽい文章とか、記号を使った暗号とか。セオリー通りと言うか、ミステリとかクイズとかで暗号解読の類をいくつかこなしたことのある人ならひらめきやすいんじゃないかと思うんですよ。ただし、今回は舞台の遊園地が何よりの敵だったわけで……広いよ! ヒントを集めるまでが一苦労だよ! やっぱり今回も最大の敵は時間制限と思ってしまう。まあ、最後の謎はさっぱり解けてなかったけどね!
それにしても今回の脱出、初めて身内と組んで挑んだわけで。前回と前々回はその場でランダムにチームを組む仕様だったので初対面の集まりでの兆戦で、それはそれで面白くもあったけど、やっぱり気の知れた仲で取り組めるのは楽しいね。気兼ねも要らないし。ただ、3人は少なかったかもなあと。今回は人数制限もないのでね、5人組くらいだと手分けもしやすかったのかしらんと少し思う。かといって、何十人っていう大きなチームだとそれはそれで達成感に欠けそうですが。出るだけが目的じゃないんだ、自分の、自分たちの力で解き明かしたいんだ……!
というわけで、まだまだリアル脱出への挑戦は尽きそうにないんでした。今度こそ! もう何度も言ってるけど今度こそ!